おはようございます、祐川です。
子どもがある日、こう言うことがあります。「将来、プロのバスケ選手になりたい」。
この一言に、親はちょっとドキッとしますよね。応援したい気持ちと同時に、心の中で別の声も聞こえてくる。「いやいや、プロなんて、どれだけ難しいか」。その現実的な心配も、すごく分かります。実際、プロになれる人はほんの一握りで、ほとんどの子はプロにはなりません。
でも今日は、「プロになりたい」と言われた時に、僕ならどう返すか、という話をします。
否定も、誇張も、しない
まず、僕が気をつけているのは、二つの極端を避けることです。
ひとつは、頭ごなしの否定。夢を口にした、その瞬間に、「現実を見なさい」「そんな簡単じゃない」と、夢ごと潰してしまうこと。これをやると、子どもはもう、夢を口にしなくなります。——あとで話しますが、現実を伝えること自体は、否定とは違います。まず大事なのは、入口で、夢を潰さないこと、です。
もうひとつは、逆の誇張。「あなたなら絶対なれる!」これも危ない。根拠のない「絶対」は、いつか現実とぶつかって、その子をよけいに傷つけることがある。
否定でも誇張でもない。じゃあどうするか。僕はまず「いいね、プロになりたいんだ」と、その夢をそのまま受け取ります。叶うかどうかは、いったん脇に置いて。
夢は、確率で測らない
ここが、今日いちばん伝えたいところです。夢の価値を、「叶う確率」で測らないでほしいんです。
たしかに、プロになれる確率は低い。でも、だから意味がない、なんてことはまったくない。「プロになりたい」という夢がある子は、その夢があるからこそ、今日もう一本シュートを打つ。もう少し早く体育館に行く。苦しい走り込みにも向かえる。
つまり、夢は、叶うかどうかより、「今日の自分を動かしてくれるかどうか」が大事なんです。叶う確率は低くても、今日を動かす力は本物。だから僕は、子どもの「プロになりたい」を、現実の練習を引っぱる最高のエンジンだと思っています。
でも、優しいだけでは、力にならない
ここまで聞くと、「とにかく夢を肯定して、優しく応援すればいい」と思うかもしれません。でも、僕は、それだけじゃ足りないと思っています。
特に、本気で「プロになりたい」、本気で「自分は今、どのへんにいるのか知りたい」という子に対しては。そういう子には、僕は、現実も本気で伝えます。
今のままじゃ、絶対に届かないよ、と。目標と、今の自分との間に、これだけの差がある、と。そこをごまかして、優しい言葉でなでているだけなのは、優しさじゃなくて、ただの甘やかしだと、僕は思うんです。
そして、本気なら、いちばん大事なのはここからです。「じゃあ、その差を埋めるために、今、この場所で、何をすべきか」。それを、本気で教える。現実を見せるのは、突き放すためじゃありません。本気の夢に、本気で応えるためです。
夢を受け止めることと、現実を伝えること。優しさと、甘さ。これは、別物なんですよね。
僕も、上を本気で目指した
僕自身、ずっと上を本気で目指してきました。トップの舞台で戦いたくて、必死にやってきた。順風満帆じゃなかったし、思い描いた通りに全部が叶ったわけでもありません。
でも、あの、本気でバスケットに打ち込んだ時間が、今の僕をまちがいなく作っています。指導者としての目も、自分でスクールを立ち上げる覚悟も、全部、あの「上を目指してもがいた時間」から来ている。もし、確率が低いからと早々に夢を諦めていたら、今の僕はいません。
夢は、たとえそのままの形で叶わなくても、その人を確実にどこかへ連れていってくれる。これは、僕の実感です。
プロにならなくても、残るもの
だから、こうも言えます。仮にプロにならなかったとしても、本気でバスケットに打ち込んだ時間は、決して無駄にはなりません。
うまくいかない時に、もう一回立ち上がる力。仲間と一つの目標に向かう経験。自分で考えて工夫する力。これはバスケットを通して身につくもので、その先の人生のどこででも効いてくる。
プロという「結果」にならなくても、その「過程」で得たものは、ぜんぶ残る。だから、「どうせプロになれないんだから」と、夢に向かう時間を軽く見ないでほしいんです。その時間こそが、宝物だから。
夢と、今日を、つなぐ
子どもが「プロになりたい」と言ったら、僕ならこう返します。「いいね。プロになりたいんだ。じゃあ、そのために、今日できることは何だろうね」。
夢を、受け取る。否定も誇張もせず、そのまま受け取る。本気の子には、時に、現実との差も正直に伝える。そのうえで、その大きな夢を、今日の小さな一歩につなぐ。
夢は、遠くにあるから力をくれる。でも、遠いままだと、ただの願いで終わる。遠い夢と今日の一歩を、行ったり来たりできる子は、強い。
「プロになりたい」は、現実を知らない子どもの戯言じゃありません。今日を動かす、いちばん強い力です。その力を、大事に育てていけたら、と思います。
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