おはようございます、祐川です。
子どもたちが着替え始め、使った道具を片づけていた時でした。
その日の練習について、別の指導者と話していました。
僕は自分から、こんなことを言いました。
「ちょっと教えすぎ感があります」
練習中は、子どもたちに分かりやすく伝えようとしていました。
足の位置。身体の向き。ボールの持ち方。ディフェンスとの距離。次に選べるプレー。
僕には見えるものがある。自分が経験してきたから、うまくいかない原因もある程度分かる。
だから、気づくたびに言葉を足していました。
でも練習が終わったあと、少し引っかかったんです。
丁寧に教えたつもりだけれど、子どもたちが実際に動く時間を奪っていなかったか。
僕の説明を聞くことが、練習になっていなかったか。
丁寧なら、いつでも良いわけではない
その場にいた指導者からは、「とても丁寧だった」と言ってもらいました。
同時に、説明している時間と、実際に子どもたちが動いている時間の割合を考えた方がいい、という話になりました。
丁寧という言葉は、指導者にとって安心できる評価です。
雑に教えていない。見落としていない。責任を果たしているように感じられる。
でも、丁寧さがそのまま選手の成長につながるとは限りません。
一度に三つ、四つと修正点を伝えられた選手は、何から直せばいいか分からなくなることがあります。
一つ目を意識すると、二つ目を忘れる。
全部を守ろうとすると、動きが遅くなる。
コーチの顔を見て、次の正解を待つようになる。
知識として正しい説明でも、その瞬間の選手が使えなければ、情報が増えただけで終わります。
指導者がたくさん話したことと、選手が一つ使えるようになったことは、同じではありません。
伝えたい理由の中に、不安があった
なぜ僕は説明を増やしてしまうのか。
振り返ると、子どもを思う気持ちだけではありませんでした。
ちゃんと教えなければならない。
参加費をもらっているのだから、何かを持ち帰ってもらいたい。
自分が気づいているのに言わなければ、仕事をしていないような気がする。
保護者が見ている場では、指導していることが伝わるように話したくなる。
そこには、コーチ側の不安もあります。
沈黙して見守るより、説明している方が「教えている感」は出ます。
すぐに修正すれば、その場では形が整うこともあります。
でも、コーチが答えを渡し続けたことで整ったプレーは、コーチがいない試合でも再現できるでしょうか。
僕が育てたいのは、説明を正確に再現する選手ではありません。
状況を見て、自分で選び、失敗したら選び直せる選手です。
そう考えると、僕が分かっていることを全部伝えることが、必ずしも親切ではないと気づきます。
「今日はここまで」を決める
練習後の対話で出てきたのが、「その日のゴールを決める」という考え方でした。
気になるところは、いくつもあります。
姿勢も直したい。
足の向きも直したい。
ボールの位置も気になる。
判断の速さも上げたい。
でも、その日すべてを直そうとしない。
例えば、その日の焦点が「ディフェンスより前へ身体を入れること」なら、そこができた時に一度合格を出す。
他の部分が気になっても、次回へ残す。
これは、見逃すこととは違います。
何を今扱い、何を後へ回すかを決めることです。
コーチが情報を削ると、選手は一つの課題へ集中できます。
一つできた感覚を持ったまま、もう一度試せます。
反復する中で、自分なりの調整も始まります。
「全部できていない」と言われ続けるより、「ここはできた。次はこれ」と渡された方が、前へ進む足場ができます。
## 説明のあとに、ボールが止まっていないか
説明の長さは、時計だけでは測れません。
三十秒でも、選手が理解できない言葉が続けば長い。
二分でも、これから起きる状況を明確にし、すぐ試せるなら必要な場合があります。
僕が見るべきなのは、「何分話したか」だけではありません。
説明のあと、選手が迷わず動き始めたか。
プレーの回数が十分に確保されたか。
同じミスが出た時、本人が少し変えようとしていたか。
コーチの言葉を待たず、仲間同士で話す場面があったか。
説明が終わるたびにボールが止まり、全員がこちらを見る。
それが何度も続くと、練習の主役が選手ではなくコーチになります。
逆に、コーチが短い言葉だけを置き、選手が何度も動きながら意味を探しているなら、練習は選手のものになっていきます。
全員を止める前に、三つから選ぶ
何か気づいた時、僕の最初の反応は全員を止めることでした。
笛を吹き、集め、見本を見せる。
全員へ同じ説明を渡せるので、効率が良いように見えます。
ただ、実際には一人だけが困っている場合があります。
ほかの選手はすでに理解し、試したい状態なのに、全員が説明を聞くことになる。
そこで、介入を三つに分けて考えます。
一つ目は、全員を止める。
安全に関わること、練習の目的が全体でずれていること、同じ誤解が何人にも広がっている時です。
二つ目は、プレーを続けながら個別に渡す。
並んでいる時間や交代の瞬間に、「次は足の向きだけ見よう」と短く伝える。ほかの選手の反復を止めず、その選手へ必要な一つを渡します。
三つ目は、何も言わず次の一本を見る。
ミスの直後に本人が足元を確認したり、スピードを変えたりしているなら、すでに自分で修正を始めているかもしれません。
そこで言葉を重ねず、本当に変化が出るかを待つ。
何も言わない選択には勇気が必要です。
でも、選手が自分で気づいた瞬間までコーチの説明で上書きしないことも、育成には必要だと思います。
全員を止めることが悪いのではありません。
気づくたびに全員を止めるのではなく、今の問題は誰のもので、どの介入が一番小さく届くのかを選ぶことです。
質問も、答えを言わせる道具にしない
「今のプレー、どうだった?」
指導者が質問を使うことは大切です。
ただ、コーチが欲しい答えを当てさせるだけなら、説明を質問の形へ変えただけです。
選手が答えたあと、すぐに「違う、正解はこう」と返せば、次から選手は自分の見え方より、コーチの表情を読むようになります。
僕自身、答えを知っていると待つことが難しくなります。
沈黙が続く。
言葉がまとまらない。
見当違いに聞こえる答えが返ってくる。
その時、すぐ説明したくなる。
でも、選手がまだ考えているのか、本当に分かっていないのかを見ずに言葉を重ねれば、考える途中を奪います。
質問をしたなら、少し待つ。
返ってきた言葉から、本人が何を見ていたかを知る。
必要なら「ほかには何が見えた?」と一段だけ深める。
正解を早く渡すより、選手の視界を知ることが先です。
僕が黙ると、見えてくるもの
説明を減らすと、最初は不安です。
本当に伝わっているのか。
練習の質が下がっていないか。
何も教えていないように見えないか。
でも、僕が話すのを止めると、今まで聞こえなかったものが出てきます。
選手同士がどんな言葉を使っているか。
誰が周りを見ているか。
失敗のあと、自分で何を変えようとしているか。
同じ動きを繰り返しているだけなのか、相手を見て選び直しているのか。
コーチが話し続けている間は、こうした情報を見落としやすくなります。
黙ることは、何もしないことではありません。
観察する仕事へ戻ることです。
練習後の振り返りも、「うまく教えられたか」だけで終わらせないようにします。
自分が何回、全体を止めたか。
同じ説明を何度繰り返したか。
説明の直後、選手のプレーはどう変わったか。
こちらが言う前に、自分で修正した選手はいたか。
録音や映像が残っていると、自分が思っていた以上に話していたことがあります。
逆に、短い一言だけでプレーが変わっている場面もあります。
指導の評価を、話した内容の正しさだけでなく、その後に起きた変化までつなげて見る。
それができれば、「もっと説明しなければ」という不安から少し離れられます。
伝えないのではなく、届く量へ変える
もちろん、説明が不要だと言いたいわけではありません。
安全に関わることは、曖昧にできません。
初めて取り組む技術には、動きの見本も必要です。
選手が何度試しても入口を見つけられない時には、具体的な助言が助けになります。
大事なのは、教えるか、教えないかの二択ではありません。
今の選手へ届く量まで削れているか。
説明したあとに、試す回数を渡せているか。
その日の焦点を、コーチ自身が手放さずにいられるか。
練習後に「教えすぎたかもしれない」と思ったことは、僕にとって失敗の告白というより、指導を更新するための記録です。
知識が増えるほど、話せることも増えます。
だからこそ、何を話さないかを選ぶ力が必要になります。
僕はまだ、気づくと説明を足してしまいます。
それでも、全部言わなければ伝わらないと思うのではなく、一つ渡して、選手がどう使うかを見る。
その余白を残せる指導者でありたいと思っています。
One Step Resilience #013
全部を伝えないことも、選手を信じる指導になる。
最後まで聴いていただき、ありがとうございました。
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