おはようございます、祐川です。
3x3の試合でタイムアウトを取る。
選手たちが集まる。
でも、そこに答えを教えてくれるコーチはいません。
誰を守るのか。次はどう攻めるのか。疲れている選手を交代させるのか。
短い時間の中で、コートにいる選手たちが話し、決め、もう一度コートへ戻ります。
僕が3x3でプレーしていた時、この「自分たちで決めなければならない時間」に何度も難しさを感じました。
正しい答えが分からなくても、試合は待ってくれません。
世界一を決めたコート
2026年6月1日から7日まで、ポーランドのワルシャワでFIBA 3x3ワールドカップが開催されました。
男子はラトビア、女子はアメリカが優勝しました。
3x3は、3人がコートに立ち、交代選手は1人。攻撃時間は12秒です。
そして3x3では、試合中に選手がコーチから指示を受けることは認められていません。
タイムアウト、選手交代、戦術的な修正も選手主体です。
これは単にコーチがいないという話ではありません。
日頃の練習で、選手がどれだけ見て、考えて、言葉にしてきたかが、そのまま試合へ出る競技です。
「指示待ち」では間に合わない
3x3では、失点した直後にも試合がすぐ動きます。
12秒の中で相手の位置を見て、味方の状態を見て、自分たちで選ぶ。
誰かが答えを言ってくれるまで待っていたら、次のプレーが始まってしまいます。
だから必要なのは、いつも正解する力ではありません。
今見えていることを短く共有し、次の一本で試す力です。
「相手は右を切っている」
「次はスクリーンを使わず、空いた方へ切ろう」
「自分がこの選手を守る」
長い説明はできません。
短く、具体的に、次の行動へつながる言葉を出す。
僕も、自分の中だけで考えていた
僕自身、3x3でいつも適切な判断ができたわけではありません。
疲れてくると、自分のプレーだけで精いっぱいになります。
失点したあとに、自分では「次はこう守る」と思っていても、それを仲間へ伝えていない。
仲間は別の修正を考えている。
そのまま次のプレーに入り、同じ場所が空く。
そこで学んだのは、判断は頭の中だけで完結しないということです。
チームで戦うなら、自分の見え方を言葉にして初めて、チームの判断になります。
例えば守備で、僕は「次はスイッチする」と思っていた。でも仲間は「そのままついていく」と考えていた。
どちらかが絶対に間違っていたわけではありません。
問題は、二人の考えが共有されないまま次のプレーへ入ったことでした。
一人は相手を受け渡す。もう一人は元の選手を追う。その瞬間に、同じ相手へ二人が寄ってしまい、別の選手が空く。
試合が止まったあとに「なんで来なかったんだ」と言っても遅い。
必要だったのは、失敗後の責任追及ではなく、プレー前の短い確認でした。
「次、スイッチ」
「そのまま」
「自分が中を見る」
ほんの数語でも、共通認識は作れます。
この経験から、対話は試合が止まった時だけに行うものではなく、プレーとプレーの間に続ける技術だと考えるようになりました。
コーチが黙る時間
この経験は、今の育成にもつながっています。
僕は、指導者が何も教えない方がいいとは思っていません。
技術を伝えることも、基準を示すことも必要です。
ただ、練習中のすべての答えをコーチが先に言ってしまうと、選手が考える前にプレーが決まります。
だからゲーム形式の練習では、すぐに止めず、選手たちが一度話す時間を作ることがあります。
「今、何が起きていた?」
「次の一本で何を変える?」
コーチが答えを言う前に、選手同士で短く確認する。
最初は「もっと頑張る」「ちゃんと守る」しか出ないこともあります。
そこから、
「どこを守る?」
「誰が最初に声を出す?」
と具体的にしていきます。
コーチが黙ることは、放置することではありません。
選手が考える時間を守ることです。
対話も練習できる
判断力というと、シュートかドライブか、パスかというプレー選択を想像しがちです。
でも、チームで必要なのは、見えたものを共有する力です。
練習中に30秒だけ、選手だけのタイムアウトを作る。
全員が一つずつ見えたことを言う。
最後に「次の一本で変えること」を一つだけ決める。
こうした対話も、技術と同じように繰り返すことで上達します。
一人の声が大きすぎて、ほかの選手が話せないこともある。
意見が二つ出て、まとまらないこともある。
それも含めて練習です。
声が大きい選手だけがリーダーではありません。
周りを見ている選手。仲間の意見を整理できる選手。迷っている仲間に短い言葉を渡せる選手。
そういう役割もあります。
僕が練習で選手だけの30秒を作るなら、最初から「自由に話して」とは言いません。
慣れないうちは、話す順番を決めます。
最初の選手は、相手が何をしているかを一つ言う。
次の選手は、自分たちの問題を一つ言う。
三人目は、次の一本で試す案を出す。
最後の一人は、全員の言葉を短くまとめる。
例えば、
「相手は右からばかり攻めている」
「ヘルプが遅れている」
「次は右を切って中で待とう」
「じゃあ、右を切る。抜かれたら中で止める」
ここまで決めたらコートへ戻る。
次のタイムアウトでは役割を入れ替えます。いつも同じ選手だけが話す状態にしないためです。
観察する力、問題を言葉にする力、提案する力、仲間の意見をまとめる力。
これらは別々の力です。役割を回すことで、声の大きさだけではないリーダーシップが育ちます。
話し合いがまとまらなかった時も、それ自体が失敗ではありません。
「なぜ決められなかったのか」まで振り返れば、次の対話を改善できます。
教えることと、任せること
指導者として、選手が迷っていると助けたくなります。
親としても、子どもが失敗しそうなら正解を伝えたくなります。
でも、答えを渡す前に一度だけ待つ。
「あなたはどう見えた?」
「次はどうしたい?」
と聞いてみる。
すぐに良い答えが返ってこなくても、それでいいと思います。
ただし、何でも本人に任せればいいわけではありません。
考える材料がない選手には、見る場所を伝える必要があります。
「ボールだけでなくヘルプの位置を見よう」
「残り時間も確認しよう」
視点を渡した上で、最後の選択は選手へ返す。
教えることと、任せることの間を行き来するのが指導だと思います。
もう一つ大切なのは、選手が決めた作戦の結果だけで評価しないことです。
自分たちで決めた守り方を実行したのに、相手が難しいシュートを決めることもあります。
逆に、約束した動きができていないのに、相手のミスで失点しないこともあります。
結果だけを見れば、前者は失敗で後者は成功です。
でも育成で確かめたいのは、何を見て、何を決め、実際に同じ意図で動けたかです。
「入れられたからダメ」ではなく、
「決めた通り右を切れたか」
「ヘルプの位置へ先に動けたか」
「終わったあとに修正点を言えたか」
まで見る。
判断と実行を分けて振り返ると、選手は結果に振り回されず、自分たちの成長を確認しやすくなります。
30秒を、選手に返す
ゲーム形式の練習中、僕が答えを伝える代わりに、30秒だけ選手へ時間を返すことがあります。
条件は三つです。
全員が一言話す。
誰かを責めない。
次の一本で変えることを一つ決める。
そのあと一本だけプレーして、変化があったかを見る。
正解だったかより、自分たちで決めたことを実行できたかを見る。
選手の言葉が曖昧なら、コーチは答えではなく問いを一つ返す。
世界大会の3x3で見える素早い判断や短い対話は、特別な才能だけで生まれるものではありません。
日頃から自分で見て、選び、仲間へ伝えてきた積み重ねです。
タイムアウトでベンチを見る場所がない。
だからこそ、選手は仲間を見ます。
そして、自分たちで次の一手を決めます。
これは3x3だけの話ではありません。
五人制でも、学校でも、仕事でも、誰かが常に答えを教えてくれるわけではありません。
だからこそ、日頃から「どうしたらいい?」と答えを求めるだけではなく、「自分にはこう見えた。次はこうしたい」と言葉にする経験が必要です。
保護者が子どもへ聞く時も、「コーチは何て言っていた?」だけではなく、「自分にはどう見えた?」と聞いてみる。
その問いは、子どもを一人にするためではありません。
自分の判断を持ちながら、仲間と協力できる選手になるための問いです。
One Step Resilience #010
答えを待たず、仲間と次の一手を決める。
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