スケガワ|挑戦と育成の裏側
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その沈黙は、やる気がないからじゃなかった。
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その沈黙は、やる気がないからじゃなかった。

おはようございます、祐川です。

練習中にミスをした後、急に黙ってしまう子がいます。

さっきまで元気にプレーしていたのに、シュートを外した瞬間、パスミスをした瞬間、ドリブルで取られた瞬間に、表情が消える。

返事はする。
でも、声は小さい。
次のプレーに入るまで、少し時間がかかる。
目線が下がって、なんとなく体も重たく見える。

こういう時、大人はつい思ってしまいます。

「ふてくされているのかな」
「やる気がないのかな」
「切り替えが遅いな」

でも、最近あらためて思うんです。

その沈黙は、やる気がないからじゃないことがある。

むしろ、うまくなりたいから黙ってしまう子がいる。

期待に応えたいから、言葉が出なくなる子がいる。

ミスを軽く受け止めているのではなく、ミスを重く受け止めすぎて、動けなくなっている子がいる。

黙った子の中で起きていること

ミスをした後に黙る子は、何も考えていないわけではありません。

むしろ、頭の中ではたくさんの言葉が動いていることがあります。

「またやってしまった」
「怒られるかもしれない」
「みんなに迷惑をかけた」
「次も失敗したらどうしよう」
「自分はやっぱり下手なんだ」

外から見ると、ただ黙っているだけに見える。

でも中では、自分を責める言葉がかなり強く鳴っていることがあります。

その状態の子に、すぐに

「切り替えろ」
「下を向くな」
「もっと声出せ」
「やる気あるのか」

と投げると、子どもはさらに固まってしまうことがあります。

もちろん、切り替える力は大事です。

でも、切り替えろと言われてすぐ切り替えられるなら、その子はもう苦しんでいない。

大事なのは、沈黙を叱る前に、その沈黙の中で何が起きているのかを見ようとすることだと思います。

励ましたつもりが、追い詰めていたこともある

ここからは僕の反省もあります。

僕自身も、選手に対して「大丈夫、大丈夫」「次いこう」と声をかけることがあります。

それ自体は悪いことではありません。

でも、タイミングによっては、その「大丈夫」が子どもに届かないことがあります。

本人の中では、全然大丈夫じゃない。

悔しい。
恥ずかしい。
怖い。
また失敗したらどうしようと思っている。

その状態で、大人が早く空気を戻そうとして「大丈夫」と言うと、子どもはこう感じることがあります。

「大丈夫じゃない自分はダメなんだ」
「早く立ち直らないといけないんだ」
「この気持ちを出したら迷惑なんだ」

励ましたつもりなのに、結果的にその子の感情を急がせてしまう。

これは、指導の現場でも、親子の会話でも起こることだと思います。

試合後の車内でも同じです。

親御さんは励ましているつもりで、

「大丈夫だよ」
「次頑張ればいいよ」
「そんなに落ち込まなくていいよ」

と言う。

でも子どもは、まだ悔しさの中にいる。

その時に必要なのは、すぐに前向きな言葉を渡すことではなく、まずその悔しさを置ける場所を作ることなのかもしれません。

ミスを感情からデータに戻す

僕が大事にしている考え方の一つに、「ミスはデータ」というものがあります。

でも、これはただ明るく言えばいい言葉ではありません。

「ミスはデータだから気にするな」

では、少し雑だと思っています。

子どもにとってミスは、最初は感情です。

恥ずかしい。
悔しい。
怖い。
申し訳ない。

まず感情として起きる。

その感情を無視して、いきなりデータにしようとしても、なかなかうまくいきません。

大事なのは、感情を否定せずに、少しずつデータに戻していくことです。

「今のミス、悔しかったよね」
「でも、何が起きたか一緒に見てみよう」
「パスを出すタイミングが少し早かったかもしれない」
「次は一歩待ってから出してみよう」

こうやって、責めるのではなく、一緒に観察する。

するとミスは、その子の価値を下げるものではなく、次のプレーを良くするための情報に変わっていきます。

これが本当の意味での「ミスはデータ」だと思っています。

僕自身も、沈黙していた時期があった

僕も、うまくいかない時に黙ってしまうタイプでした。

怪我をした時。
病気で思うように動けなかった時。
試合に出られなかった時。
会社員として働きながら、心が折れそうになっていた時。

周りから見たら、何を考えているか分からなかったかもしれません。

でも、自分の中ではずっと考えていました。

「このままでいいのか」
「もう無理なんじゃないか」
「自分には価値がないんじゃないか」
「また失敗したらどうしよう」

黙っている時ほど、心の中はうるさいことがあります。

だからこそ、今、子どもたちが黙ってしまう瞬間を見ると、すぐに決めつけたくないと思うんです。

やる気がないわけではないかもしれない。

逃げているわけでもないかもしれない。

その子なりに、必死に自分の失敗と向き合っている途中かもしれない。

そう思えるだけで、大人の言葉は少し変わります。

急いで埋めない

沈黙があると、大人は不安になります。

何か言わなきゃと思う。
空気を変えなきゃと思う。
早く前を向かせなきゃと思う。

でも、時には沈黙を急いで埋めないことも大事だと思っています。

もちろん、放置するという意味ではありません。

見ていないふりをするのでもありません。

ただ、すぐに正解の言葉を渡そうとしない。

少し待つ。
表情を見る。
呼吸を見る。
次のプレーにどう戻るかを見る。

そして必要なら、短く声をかける。

「悔しかったな」
「今の、もう一回見てみよう」
「大丈夫。次の一個だけ一緒にやろう」

長い説教はいらないことがあります。

きれいな励ましも、いらないことがあります。

その子がもう一度プレーに戻るための、小さな言葉でいい。

専門家として見ても、沈黙はサインになる

僕は、認定レジリエンスカウンセラーとしても、子どもの「立ち直る力」や「折れない心」について学んできました。

その知見から見ても、ミスをした後の沈黙は、単なるやる気のなさではなく、心が自分を守ろうとしている反応であることがあります。

すぐに前向きな言葉をかけることが必要な時もあります。

でも、まずはその子の感情を否定せず、安心できる状態に戻してあげること。

そのうえで、何が起きたのかを一緒に整理し、次の一歩に変えていくこと。

これは、レジリエンスを育てるうえでも大切な関わり方だと感じています。

だから僕は、ミスをした子に対して、ただ「切り替えろ」と言うよりも、

「今、何が起きているのか」
「その子はどう戻ろうとしているのか」
「次の一歩をどう一緒に作れるのか」

を見たいと思っています。

その方が、子どもはもう一度挑戦に戻ってこられる。

そう信じています。

大人が見ているものは、子どもに伝わる

大人が何を見ているかは、子どもに伝わります。

ミスだけを見ているのか。
態度だけを見ているのか。
結果だけを見ているのか。

それとも、

ミスの後に戻ろうとしたこと。
黙っていても、もう一回ボールを見たこと。
悔しそうな顔をしながらも、列に戻ったこと。
次のプレーで少しだけチャレンジしたこと。

そこを見ているのか。

子どもは、意外と感じています。

「この大人は、失敗した自分をどう見ているのか」

そこに安心があると、子どもは少しずつ挑戦に戻ってこられる。

逆に、失敗した瞬間に全部を評価されると、挑戦する前に大人の顔を見るようになる。

だから、ミスの後こそ、僕たち大人の見方が問われると思っています。

その沈黙の奥に、何があるか

もし今日、練習や試合の中で、子どもがミスの後に黙ってしまったら。

「やる気がない」と決めつける前に、一度だけ考えてみたいです。

その子は、本当は何を感じているのか。

悔しいのか。
怖いのか。
恥ずかしいのか。
期待に応えたかったのか。
もう一度やりたいけど、どう戻ればいいか分からないのか。

沈黙は、サインです。

その子の中で何かが起きているというサインです。

そして、そのサインをどう受け取るかで、次の挑戦は変わっていきます。

One Step Resilience #004
沈黙の奥にある挑戦を、急いで否定しない。

最後まで聴いていただき、ありがとうございました。

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