おはようございます、祐川です。
今日は、いま教育とスポーツの世界で、いちばん大きく動いているニュースの話をします。部活動の、地域移行です。
これまで学校の先生が担ってきた部活動を、地域のクラブや民間に移していく、という大きな流れです。国は二〇二六年度から「改革実行期間」に入り、まず休日の部活動は、原則すべての学校で地域に移すことを目指すと打ち出しています。
これはもう「いつかの話」ではありません。たとえば神戸市では、二〇二六年九月から、中学校の部活動を休日も平日も完全に終了し、地域のクラブ活動に切り替えると発表しています。つまり、町によっては、本当に「学校の部活がなくなる」。その時、子どもたちはどこでスポーツをやるのか。今日はその話です。
いちばんの問題は「受け皿」
このニュースは、たいてい「先生の負担が減る」という良い面で語られます。先生の働き方は深刻な問題なので、そこは大事です。でも、現場から見ていて、いちばんの問題は別のところにあります。受け皿です。
部活をやめます、と言うのは簡単です。でも、その子たちが移っていく先のクラブが、ちゃんとあるのか。教える指導者がいるのか。場所は確保できるのか。
実際、休日の移行は進んでも、平日の移行はかなり遅れています。毎日となると、受け皿がまったく足りないからです。制度の上では「地域に移す」と書いてあっても、その調整を学校が抱えたまま、ということも起きている。地域クラブとの連絡、保護者への説明、場所の手配。それが全部学校に残れば、先生の仕事は減るどころか増えてしまう。きれいな制度の言葉の裏で、現場は「で、誰がやるの?」という問いに、まだ答えられていないんです。
僕は、その「受け皿」を作っている側です
なんでこの話を僕がするのか。僕は今、FOGという中学生年代のクラブチームを運営しています。これはまさに、地域移行で言うところの「受け皿」を、自分で作っているということです。しかも、先輩もいない、伝統もない、ゼロからの立ち上げでした。
やってみて、痛いほど分かったことがあります。受け皿って、「誰かが用意してくれる」ものじゃない。
誰かが、場所を借りて、お金を回して、指導者を集めて、保護者に説明して、毎週続ける。その「誰か」がいないと、受け皿は言葉の上にしか存在しない。そして、立ち上げる情熱があっても、それだけでは続かない。お金や仕組みの準備がないと、いいチームでも一年や二年で消えてしまいます。
部活がなくなるというニュースの裏側には、この「受け皿を、誰がどうやって続けるのか」という、地味で重い現実があります。
子どもにとって、これは「環境問題」です
はっきり言っておきたいことがあります。部活動の地域移行は、子どもにとっては「環境問題」です。
同じくらいの才能とやる気を持った子が二人いても、片方の町には受け皿があって、もう片方の町には何もない。それだけで、その子がスポーツを続けられるかどうかが変わってしまう。これは、その子のせいじゃない。生まれた場所、住んでいる地域で、挑戦できるかどうかが決まってしまう。
僕がずっと言っている「挑戦する子は、環境で決まる」というのは、本当はこういう具体的な話なんです。気持ちの問題じゃなくて、近所にクラブがあるか、という現実の環境の問題。だから僕は、自分の町で受け皿を作る側に回りました。誰かが用意してくれるのを待っていたら、間に合わない子が出てきてしまうからです。
「うちの地域は、大丈夫ですか?」と聞かれる
最近、保護者の方とこの話になると、よく聞かれます。「先生のところみたいなクラブ、うちの近くにもあるんですか?」「これから、うちの子の場所って、どうなるんでしょう?」
正直に言うと、その場ですぐに、きれいな答えを返せないことが多いんです。地域移行の進み方は、本当に地域によってバラバラだからです。隣の市では受け皿が育っているのに、こっちはまだ何もない、ということが普通に起きている。誰も、全国どこでも通じる“正解の地図”を、まだ持っていません。
でも、僕はこう思っています。答えがまだ無いからこそ、保護者と、僕たちのような現場の人間が、同じ側に立って、一緒に探していくしかない、と。「親だけで何とかして」でもなく、「学校に全部おまかせ」でもない。子どもの居場所のことを、大人同士が同じテーブルで話す。その空気が町に増えていくこと自体が、たぶん、いちばんの受け皿になります。
だから僕は、こういう話を、ポッドキャストでもしています。一人で抱えて不安になっている保護者の方に、「同じことを考えている大人が、ここにもいますよ」と伝えたくて。
居場所は、待つより、作る
部活がなくなるというニュースを聞くと、不安になりますよね。うちの子の居場所はどうなるんだろう、と。その不安は正しい。実際、受け皿はまだ全然足りていません。
でも、僕は悲観ばかりはしていません。これは「子どもの居場所を、地域の大人たちが自分で作っていける時代になった」ということでもあるからです。学校に任せきりだったものを、もう一度、地域の手に取り戻す。大変だけど、やりがいのある話です。
その「地域の大人」は、特別な誰かじゃありません。元選手かもしれないし、お父さんやお母さんかもしれない。もしかしたら、これを読んでいる、あなたかもしれない。
僕は、その一人として、これからも現場で受け皿を作り続けます。そして、同じように「うちの地域でも何かやりたい」という人がいたら、いつか一緒に、その話をしたい。子どもの居場所は、誰かが用意してくれるのを待つより、作る側に回ったほうが早いんです。
今日の話が、地域移行のニュースに不安を感じている保護者の方、そして受け皿を作ろうとしている誰かに、届いたら嬉しいです。
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